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日本の浮世絵などで知られる伝統技法【木版画】とは? ②

伝統木版画における「絵師」の役割

木版画の大元となる版下絵(原画)を描くのが「絵師」です。
絵師は今でいう「イラストレーター」の立場であり、「出版社兼ディレクター」である「版元」と専属契約を交わしてお抱えになるものや、人気絵師の場合は独立して版下絵作りを請け負いました。
絵師は版下絵を作るにあたり、時代のはやりや嗜好だけではなく、制作にかかる予算や期間、対象の配置のルールなど、版元の意向に合わせて全体の構成を考えて図案を手がけました。

木版印刷における絵師として名が残されたのは「菱川師宣」が最初と言われ、『富岳三十六景』で有名な「葛飾北斎」や「美人画」の「喜多川歌麿」も絵師であり、現代でも人気の高い作品を数多く残しています。

絵師の仕事 伝統的木版画の版下の作り方

図案を構成する
版元から提示された製作期間や予算に制限があるため、絵師は最低限の色数を構図や色表現に工夫を凝らすことで効率化を図りながら、絵筆で人物や風景などの版下絵を描きました。
現在では、肉筆だけではなくコンピューターのデジタルイラストや写真など様々な平面描写をもとにした版下絵も使用されています。

校合を作る
版下絵は、まず墨で輪郭線を描きます。
この墨絵は一旦彫師に渡り、輪郭線を彫った版木「主版(しゅはん)」(後述)を摺り、使用される色数と同じ数の単色墨摺絵「校合(きょうごう)」を作ります。

校合に彩色する
校合に同色の部分に手描きで彩色を行い、彫師へ色摺りの版木「色版(いろはん)」作りの指示を書き込みます。
版下絵や校合は下の画像のように制作過程で版木とともに削られていくため、残ることはほぼありません。

木版制作工程 アダチ版画製作所HPより