墨による独自の抽象表現の領域を拓いた美術家『篠田桃紅』
前衛書から、墨による独自の抽象表現の領域を拓いた美術家『篠田桃紅』。
惜しくも2021年に107歳でこの世を去り、ニュースでも取り上げられたことで芸術に関心がなかった方もその名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
篠田桃紅とは
篠田桃紅は中国大連に生まれ、東京で育ちました。
幼少のころより書に親しみ、1940年に銀座鳩居堂で初の書の個展を開催。
自由な表現を志したものの、当時の日本ではそれを認められることはありませんでした。
その後、敗戦と病からの療養を経て1947年頃より文字に囚われない抽象的な作品を手がけるようになりました。
1956年には単身アメリカへ渡り、ニューヨークで約2年ほど活動します。
抽象芸術と日本の前衛書が時代の先端として広まる中、篠田桃紅の表現は高い評価と注目を集めていきます。
日本へ帰国後は、書と絵画、文字と形象という二分法にとらわれない墨による独自の抽象表現と空間表現を確立していきます。
海外での活動期間に得た型にはまらないオリジナリティー性は、他の追随を許さない程に国内での地位を高めていきます。
篠田桃紅作品の魅力
一見するとシンプルに見えますが、無駄を極限まで削ぎ落し、残った部分に色濃い生命のようなものを感じさせられます。
最後の一滴まで減量を突き詰めたボクサーのような、凝縮した力強さのようなものがありますね。
篠田桃紅先生は「作品には関係のないタイトルをつける」という特徴がありますが、それは鑑賞者がタイトルの意味に引っ張られてしまわないようにという理由があるようです。
見る者によってそれぞれ感じるものが違ってもいいじゃないか、必ずしも正解を見つけないといけない訳ではないということなのでしょう。
現在は篠田桃紅先生の作品自体の流通が少なくなり手に入らなくなってきており、市場価値も先生がご生前のころに比べ高騰しているという状況です。
もしも作品を見つけた際には迷わず手に入れるのもいいかもしれません。